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author : 瑞希 ×
一代でそれまでの悪政を廃止し、貧困や生きる為の食物連鎖-コロシアイ-に耐え苦しむ民の全てが幸福に在れるようにと大改革を行った女王
これまでの豪華で気ままな生活を乞い反発する皇族には等しく粛正を
世の良い循環の為に、彼女はその高き知性にて善き治世を行った
諍いは減り、自らが幸せな世に犯罪など起こす者も無く、
民は新たな優しき女帝に神を見て、彼女の心地良い独裁に異を唱える者など誰一人として居なかった

しかし民は知らぬだけ 彼女の絵画の表面を愛でているだけ
この束の間の幸福は、彼女の筆がなぞるたったひとつの彩りに過ぎないのだから


身の丈程の高さに置かれ貼られた白い布に筆を滑らせながら、
女王は謂う

とても厳かで美しく品も無上であり唯一無二な大きなキャンパスが在ったの
しかしそれの存在を私が知った時、その一面は既に黒一色のペンキで汚らしく乱暴に覆われて居た
嗚呼、なんて残酷な事をするのだろう、このように偉大なキャンパスならば一体どのような創造が生み出せるのか、凡人とはそれすら理解出来ぬ愚人らしい
私は神に祈り嘆いた、私なら、私ならこの一面に他に類を見ない程に美しく煌びやかで愛おしい楽園を描き出せるというのに…
幼心にその愚行を憂いた私は長い年月を経てようやっとそのキャンパスを手に入れる事が出来た…
目の前、手の届く距離に置いたそれは、初めて見惚れたその時よりももっと煤にまみれ、埃なんて彼方此方に被っているのが当たり前、時たま気まぐれに新しい色を載せたような跡もあったけれど…
そう、黒に何を混ぜても所詮黒にしか成らないの 何も変わりはしないのよ

ひとつ息を吐くと筆を置き、今まさに出来上がったばかりのその小さな絵を眺めて、
女王は問う

さて、
手に入れる為ならどんな事をも惜しまず、どんな手段にだって染まってきた…それ程までして遂に手に入れた とても素晴らしく、しかし今や黒く汚れてしまったそのキャンパス
これに絵を描きたい、その為にまずしなければならない事とは何かしら?
そう、この一面を白に戻さなくてはいけない
その黒を削るなり、いっそのこと上から白いペンキを流しても良いわね、そうして新たに載る色が一番映える純白にしなければならない
そうよね?さぁこれで憎々しい黒は消え去り、私は嬉々としてその白に色を重ねたわ
私がずぅーっと描きたくて堪らなかった世界、最も美しい筆運び、最も映える色遣い、この日の為に磨いてきた絵師としての腕…
真っ白な世界に色を重ね描いているその時その時が酷く楽しくて楽しくて…
そして遂にそれが自分もこれ以上の物はないと満足し完成という終止符を落とした瞬間、気付いてしまったの
私の目の届く内は良い、
だけれどこれ程の素晴らしいキャンパス
誰かがまたこれを見初めて私の絵を削り取り、上から新しい何かを上描きされる可能性が無いわけではない、と…
嗚呼そんな事考えただけで怒りが胸を絞めて狂い死んでしまいそう
このキャンパスはこうで在るべきなのよ、例え修繕だからと言って他人がこの絵に触れる事を私は絶対に赦さない

思えば、女王陛下が大小様々なキャンパスに筆を走らせる姿は度々見るが、
出来上がったそれらを飾るでもなく…また誰かに与えるでもなく…
あのおびただしい作品の数々を一体何処に仕舞って居られるのかと疑問に思った事もあった

嗚呼、その疑問の種が今、花となり燃え上がる

赦せないならばどうするか…私の心に閉じ込めて置けば良い
物体としての形は私の手で無に帰するとしても、その瞬間にそれは私の神殿-Museum-に並べられる
そこでは美しき物は永遠に美しいまま…私がこの手で築いた美しさだって永遠に……

出来上がったばかりのその絵に、音を立てて炎が這いずり形すら変えていくのを、
女王は恍惚とした表情で眺めながらそう謂った
その眼に畏怖の情を抱きながらも、女王に呼ばれ馳せ参じた絵師の男は口を開く

畏れながら申し上げます
わたくしめはありとあらゆる絵を愛でて参りました、女王陛下が今し方火を点けられましたその小さな絵画にも心を奪われた次第で御座います
しかしそのわたくしめの拙い美感から云わせて頂きますと、貴女が剥ぎ取ったという黒にもきっと美しさは存在したと憶測致します
勿論、貴女様の築かれた『楽園』はとても美しく民も皆がそれを愛する事でしょう
ですが、その過去にあった『黒』でさえ、いわば人が歴史を積み立ててきた証…
『黒』というのは数多の色が折り重なって辿り着く色…
そして女王陛下、貴女様の仮初めの白でさえも所詮は黒の上に在るも同じ……

私が築いたこの美しい楽園よりも、貴方はその黒が愛おしいと……私の描いた物は黒の一部に過ぎぬと謂うのですか

御意

怒りに震える彼女の炎と対照的に、小さな絵画を舐め廻った火は収まりくすぶる程となっていた


その絵師は主上女王陛下に楯突いた、その報は何処からか国全体に広まった
それは全ての国民が支持をするこの国の中では逆賊以外に他ならない
救われたと信じ切っている民にとっては、我等が女王陛下こそが絶対的に正義なのである
故に、只人の絵師を擁護する様な声などひとつたりとて起こらなかったという



今日という日まで他に一度たりとて無い事だった
それなのに今になって、恐らく彼女唯一の逆鱗に触れ抗ってみせたのは何故だろうか

それは彼女の『狂気』に対する『憂虞』か、
それは自らの『美意識-センス-』と対なる『冤枉』か、
それは彼女の『傲り』に対する『決裂』か、
或いはそれは自らの『流れ逝くか細い水』と対なる『堰塞石-ピリオド-』か

冷たい石の牢獄に滴るは幾人が流した細流-雫-だろうか
美しいその潤いに自らの朱を溶いて、冷え固まる指に一掬い
鉄格子の番人は愚かな叛賊を忌み嫌いその存在すら認めようとはしない
故に邪魔する者は居らず
刑を前にして果てぬ程に鋭くも 限りなく浅く、絶えて彩りが途切れぬ程に執拗にも 抉るよう深く 切り込み交ぜるパレットは両の掌
さあ何を描こうか
そして独裁者が白に忌籠もり嫌忌する黒の石壁が罪人の朱を受け入れる───





鳩が飛ぶ
女王が愛した白い羽根を降らせながら
その白が舞い降りるは衆の元
女王が描いた『楽園』の元へ

残念、国一番と謳われた貴方程の絵師だからこそ私の理想の在り方-ポリシー-を理解してくれると思って話したというのに…

女王は執行官に男の顔に被せられた布を剥ぎ取らせ、男は廃れ窶れたその面を晒した

良いのですか?私が此処から民に貴女の全てを大声で暴露して仕舞わないとも限らないというのに…

貴方は私の師だったわ、私は貴方の絵に倣い、私の美的感覚-センス-の広まりだって貴方が居たからこそ…
だけれど結果だけはこうもどうして違ってしまった、その理由を貴方なら知っているのかと思ったの

成る程、愚かなわたくしめの最期の囁きに耳を澄ませて頂けるのですか…身に余る光栄に御座います
ですが賢者でも無いわたくしはその問いの答えなどとても持ち合わせては御座いませぬ
しかしもし在るとするならば…それは貴女様の個とわたくしめの個の違い……
ヒトというのは結局の所他人、全てを理解し合う事など出来ぬ、という事でしょうか……

そう…、ありがとう師匠-マスター-、貴方は私の良い礎でした

紅の塗られた三日月を浮かべ、彼女は実に穏やかな表情で男への別れの言の葉を唇に載せた
再び袋で顔を覆われた男は、半円に抉られたその卓へ首を置き、ふと思い出したかの様に布の中で台詞を紡ぐ

あぁそうだ、畏れながら最期にわたくしめが『師』としての言葉をお送り致しましょう
どうせわたくしめは見ての通り老いた身…この処断と変わらぬ程の残りの水量、あの時の言葉に偽りは在りませんでした
わたくしは黒さえも愛でる男に御座います…未だ黒の上に在る貴女の楽園も決して嫌いでは在りませんでしたよ

…嗚呼、貴方とは本当に判り合えないのね
私は一点の汚れもなくこの国を白に染め上げた
黒なんて楽園には存在しない、そしてこれからもそれは変わらない
嗚呼此処が完璧となった今、もういつだってこの国-キャンパス-を私の神殿-Museum-へ飾る事が出来るのよ
そう、貴方という黒を追放しさえすれば……私はもう想い遺す事なんてないの
貴方さえ居なくなれば……

執行者が白銀の斧をゆっくりと振り上げた
大きなそれは鋭く重く、男の硬骨を砕いても尚刃毀れなどしないだろう
煌びやかな白は太陽に照り返り、それを見つめる者は不特定多数
公開されていない処刑時間
しかしそれでも嗅ぎ付けてやって来る物好きの存在はどんな時代とて同じ

…全くこれの何処が楽園なのだろうか

男の含み笑いが何を指しているのかは誰も知り及ぶ所ではない

…嗚呼折角だ、もうひとつ欲を云う事をお赦し願おう
死に逝くわたくしめから先を生きる女王陛下へ最期の教えを…
執行を司る御方、是非ともその言葉を云い終えた直後にわたくしを送って頂きたい


      気付いていないというのなら気付かせてあげましょう…それが『師』としての役割だと自負しているから


萌やした後には燃やして…造った後には壊して…貴女はそこで留まっている
美を求めるならば、ほら、もっとご覧なさい…そしてお知りなさい…
油まみれの絵画が燃え尽きた跡の灰……嗚呼、不純な物で混ざり合った物体の成れの果て…其れは貴女が忌み嫌う色…其れは等しく暗い色に在る事を……







それから後のその国は、何を知る事もなく騒がしく在り続けた
目の前で自らの『師』の首が飛んだ直後、何故か半狂乱を起こした『楽園』の創造者はその後も人が変わったかの様に不可解な言動が多々見られ、
自らが『救った』民衆により彼女が政治の表舞台から降ろされるのに、さほど時間はかからなかった

彼女が愛した楽園は徐々にほころびを見せ、新たな王が新たな歴史を上描いていく
しかし『彼』が遺した呪いによりて、それさえも彼女は知る事が出来なくなっていた…



朧気だった楽園は崩れ堕ち、再び罪を犯し始めた罪人達は、城の古き牢の中で黒い壁に玄で描かれた女性の絵を見るという
それはとても穏やかな表情、優しげな瞳、何処までも美しい艶やかなその像
クロに染まり、罪深きヒトに等しく微笑みを湛える彼女

それに添えられた走り書き、掠れたその文字は読み取る事さえ骨が折れる
暗闇に苦労し読み解くと、どうやらその一部には書いた直後に擦り消されたような跡が

【仮初めの楽園-シロ-など、いずれは本質-クロ-に喰われてしまうのだ
 塵逝く老いた絵師より…若くして輝き妄執に囚われた哀れに愛しい †Musa† へ】

と...




--- とある老絵師と女王陛下のお話 ---
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
女王は白に、絵師の男は黒に執着して結局どっちも狂ってたって事です。
絵師は女王が欲しかったんじゃないかなー。
あと女王陛下はどうやってそんなデカい国を屠ろうとしたんだろう(ぇ
結局黒に朽ちたフロンティアのお話でした。
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author : 瑞希 ×
「お前の得意とするそれはたゆたいし母なるもの、そしてそれは冬の象徴でもある。
 我に何かしら解せぬような思いが在らん時は北を尋ねてみてもよい、無理をして我に付き従わぬとも善いのだぞ。」
「…主上、主上はわたくしめが煩わしゅう御思いですか。」
「そのような事は決してない、だがな、我よりもあの玄の元に居た方がお前の幸せとなるならばもしや、と、そう思う事が暫し在るのだ。
 我の手よりお前を解放した方がお前の為になるのなら…」
「主上、わたくしめを案じて下さるその御心には報いとう存じます。
 しかしながら、わたくしめの幸福は此処に御座います。
 主上、わたくしめが不甲斐なく煩くなるようならばそのようなお優しい言葉は要りませぬ、棄てるかいっそその御手で魂をお斬り棄て下さい。」
「そのような恐ろしい事を言うな!
 …頼むやめてくれ……そんな事想像すらしたくない………。」
「…………。」
「…悪い、急にこんな事言うなんてどうかしてる。
 俺は未だお前に依存している所があるようだ。お前の選んだ道を尊重すると言ったのにな…
 それを断ち切る為にと……俺は…。全く、ガキのような独占欲が変に作用してしまったようだ…。」
「主上……依存しているのはわたくしも同じ事です。
 様々な物を見て巡りて、己の収まる場所を探し倦ねいて居るにも関わらず、未だ此処への執着以上の物を見付ける事は出来ておりませぬ。
 時折に思うのです、いっそこのままずっと此処で主上と共に在る事を決める事が出来たなら、と……」
「しかしそれは…」
「はい、それは成らぬ事…そして我等2人で決めた事………だけどそんな今更な事を再度言わせたのは何処のどいつですかあなたでしょうッ!!」
(うわやべぇ久しぶりにキレたコイツ…)
「『自分と何か違うんなら自分よりも近い他のヤツの所に行けば?』って何子供みたいな駄々こねてるんですか!
 何!?自分と属性違うからって何!?何を今更気にしてるの!?
 私は今やあなたの物!あなたが私を棄てると言うのなら甘んじて受け入れる!だけど他の誰の物にもなるつもりはない!」
「…それでも俺より好きなヤツが出来たらそっち行くんだろ?」
「……マスター、仮にも親であるあなたが私を困らせないで下さいよ。
 他にどれだけ好きなヒトが出来たってあなたを大好きな事は変わらない。
 …あなたの真意は私を旅立たせる事でしょう。
 あなたが心から私を縛りたいと願うなら私も喜んでその檻に入りましょう。でもそれをあなたは望んではいらっしゃらない。」
「……そう、だな…我ながら不甲斐ない……。
 そうとでも言わぬと黄龍殿が納得されない…その言い訳を黙認して下さっていて自身が願っている事なのに俺が崩してどうするんだ…。」
「…良いじゃないですか、その言い訳に則って私はあなたの傍に居れるんです。そして縛られることなく自由に往ける。こんな幸せはありません。
 罰せられてもおかしくない立場の私を囲って下さるその事にどれだけ感謝をしているか…。」
「いや、お前には苦労をさせている。傍に置きたいが為に俺は何度…。」
「だから傍に居たいのは私も一緒なんだから大丈夫なのー!
 お互いの思いは同じなんだから、思い合うのは『感謝』だけでいいじゃないですか。」
「…お前も結構言うようになったな。」
「誰かさんの影響です。
 っていうか話戻しますけど、玄武様の『水』を気にするならあなたはどーなるんですか。」
「あ?」
「あなたが扱うのは雷でしょう。」
「…雷はそりゃ一応竜なんだから俺の専売特許だろ…。」
「他の皆様方も成ろうと思えば竜にはなれるし雷も放てるでしょ。
 っていうかあなたにしても玄武様にしても勿論他の四神の御二方や黄龍様にしても属性は一応あるけどその力を主としてる訳じゃないじゃん。
 ぶっちゃけると、そもそもあーたの何処が『木』ですか。」
「…流石に侮辱罪入ってこないかその言い様。」
「私はあなたの僕。あなたが許せば万事おっけー!」
「………相変わらずいい性格してんな。」
「黙らっしゃい!そんな事よりも話逸らさないで!
 …なんか根本があなたは判ってないような気がするから敢えてこんこんと言うんでよく聴くように!」
「…侮辱罪……」
「やかましいしつこい。
 確かに象徴は大事だよ、そのひとつでも欠けるとバランス崩れちゃうし。
 でもそこだけに注目してても埒があかないでしょうが。
 属性だけで分けるの?そうじゃないでしょ!
 さっきも言ったけど私は好きだから此処にいるの!属性とかそんなん関係ない!好きだから好きなヒトの処にいて何が悪いの!
 こーゆー微妙なのは都合良く解釈すればいいんだって!
 あなたが気にする五行を用いるとするなら、例えば『水生木』。
 『木』は『水』があっての『木』。
 自然ではそうでも神々との間、あなたと玄武様との間にそんなものはないでしょう?
 だったらあなたにとっての『水』が私で在れたなら恐れ多くも嬉しいな。
 そして私はあなたがそれを許してくれる事を確信してる。」
「…………」
「…何、
 何黙りこくってんの。」
「いや…なんかもう俺感動して……」

「あの…畏れながら申し上げても…?」
「あ?あぁ何だ?」
「御気休め程度の情報やもしれませぬが、下界一部地域では『流水』を青龍様と例える処もあるようで…
 その一部地域というのが、丁度お二方が過ごされた彼の地のように記憶しているのですが…如何でしょう。」
「………。」
「あぁ、そういえば屋敷の東に小さく川があったような。
 その土地のそういうのが影響したのかもしれないね。忘れてたね、主上。…主上?」
「…やっぱりお前は俺の物だ!!俺の処に居ろっ!!他の神々の誰にもやらんっ!!!」
「(うわぁこりゃ都合良く吹っ切れたな…)だから最初からそのつもりだってのに…。私にはあなたしか居ないんだから。



「やれやれ…ヒト騒がせな主達だ事。」
「ほんに……しかし幸せな事ではないか、これも此処が安らかに在るというひとつの印。」
「北の方の画策もどうやら阻止出来たようだし。」
「心宿、以降他の方々にも気を付けるように。」
「嗚呼、よもや某の由にてこのような事が起こるとは…面目ない、次もしあらんし折りは…」

「その時は逆手に取って存分に遊んでやれ。」

「まぁ主上お聴きで…」
「どーも俺があいつを所有してる事にジェラシー感じているヤツは他にも居るらしい…。あいつは芯は強いが用心に越した事はない。
 お前達も頭の隅にでも入れておいてくれ。」
『御心の儘に。』
「それはそうとその当の本人は何処に行った?」
「なんでも『直談判だ』、『直接文句言ってくる』などと言いながら廊を北へ……」
「馬鹿野郎見たんなら止めろっ!!」

「あらあらまぁまぁ…」
「ほんに……」
『今日も此処は平和よのぅ…』
『おほほ……』


揺れ惑う花弁。
下界は揺るがぬパステルカラーが似合う時。





自 己 満 足 !!
author : 瑞希 ×
風が2人の長い髪を掬う。
細く柔らかいそれらを撫で上げて、彼等は何処へいくのだろうか。
嗚呼どうせいくなら自分達も一緒に連れていってくれたらいいのに。
それでなくともせめてこの繋がれた掌の湿り気だけでも。
願いに反して彼等は嘲笑うように私達の髪にその指を絡ませ弄ぶ。
若い緑の匂いがやけに鼻につく。
陽に照り返る貴方の髪がただただ眩しくて仕方ない。

「…なぁ、人の愛って結局傲りだよな」
「……っこん な時に…何を いきな り…っ?」
「他人の想いが自分に在ると勝手に信じて相手を縛る…『依存』を綺麗な言の葉に言い換えただけでその本質はただの自分勝手な心の暴走」
「そ……れは…、…んっ、今、語るに必要な……、 …事で すか…?」
「いや、ふと思い付いた事を口にしているだけの戯れ事だ」

我等が今こんな状態にも拘わらず、涼しい顔の貴方がいっそ恨めしい。
だけど思案に暮れるその憂う顔さえも酷く愛おしい。
そして互いの掌の間に流れ伝う鋭痛だけがただ憎らしい。

「ぅあっ……急に、動…かないで下さ……」
「愛を『重さ』で例える事があるが、あれは結構的確な表現だとは思わないか」
「……あ、いけない……もっと強く…爪を立てて下さい…皮を裂いても構いませんから……どうか…」

「…どうでもいいが、
先程からのお前の台詞を聴いているとやけに艶があってそそられる物があるな」
「ふ…ざけないで下さい!怒りますよ!!」
「ならその手を放せばいい」
「嫌に決まってるじゃないですか…これ以上私を困らせないで下さい…」

「……。今もまさにそうだ、大地が引き寄せる力に人はただ平伏す事しか出来ず、地はその上に在る全ての物を縛り付けて離さない」
「…それに、抗うのが貴方の夢ではありませんか……」

言うと、それまで伏せていたその瞳が私を捉えた。
図らずも、きつく握る互いの手が更にきゅうと強くなる。
心がやたら煩いのに、それまであった掌の汗は何時の間にか消え失せて
 嗚呼何だろうこの予感は───

「…そうだ、一方的な束縛はするのもされるのも好きじゃない、…愛ですら同じような物だ、相手がそれを望んでいるかどうかなど判りやしない」
「…それでも貴方は万民万物を愛していらっしゃるでしょう」
「そう、俺を始め、人は皆愛無くて其処に幸福はない…それなのに俺の心はこの有様…俺に他人を愛する資格などあるのだろうか…」
「互いにそれを認め合えばそれを邪魔するものはないでしょう?貴方の愛が私に向いているとするならば、それは私も同じです」
「なら一緒にいくか?」

私がその時図らずも口を開けて軽く呆けてしまったのは、彼の言葉が一言一句私が感じ取っていた物と同じだったから。
緩く微笑んで見つめ返すと、少しだけ哀しそうな片眼で貴方は笑う。

「その愛に身を任せるのも、また一興ぞ」
「私が私の総てを委ねるのは貴方     

繋がれた右手はもう痛くない。
ただ貴方との間に灯った あかり だけがあたたかく其処に在った。


風が        止まる。
author : 瑞希 ×
眼上に展がるは、どれもこれもが色鮮やかな窓ばかり。
形、色、見える景色が異なるそれ等は一体幾億か幾兆か、数える事すらも酷く億劫だ。
遠ければ煌めく豆粒も、近ければ此れ見よがしと自身を主張して些か煩い。
見上げれば眩暈がする程、見つめれば目が痛む程の彼等。
それでも時折にこの部屋の扉を開くのは、眺めていてこれ程飽きない物が他に無いからだろう。
愉快、とまではいかなくとも、持て余した時は潰すことができる。

「父上、此方に御出でしたか…
 …此処は相も変わらず凄まじい数ですね、増えもしなければ減りもせず…
 この不規則な色の並びが見ていて気分すら悪くなります。」
「まぁそう云うな、ひとつひとつどれも興味深いものばかりだ。
 …例えばそうだな、此を見てご覧。」
「此は…人間の女ですか。」
「そう、
 しかし彼女が他の窓と違うのはその特別な感性にある。」
「…と云うと。」
「まぁ待ちなさい、
 ほら見ておいで、この彼女がどう見える。」
「…何か、困る…いや、此は戸惑って居るのでしょうか。」
「そうだその通りだ、
 彼女はその感性にただただ戸惑って居る。
 今彼女は自らの既視感を視て居るんだ。
 ただのそれだけでは説明にならないね、この人間はね他人よりもその体験が桁違いに多いんだよ。」
「既視感…つまり、
 過去に自分が同じ場所、または行動をとったかの様に感じてしまうその感情の頻発に戸惑って居ると…。」
「そうみたいだね。」
「しかし父上、私はその様なもの体感した試しがありません。」
「そう、我々に既視感などあってはならないからだ。我々がそう造られているからだ。
 故に我々には存在し得ない、彼等特有の感情だという事。
 既視感が多い彼女は、それだけその生を重ねたという結果。
 それは我々にはあってはならない事なんだよ。」
「…彼女は幾度目の生なのでしょうか。」
「さて、この分だと相当な…
 あぁ、どうやらまた数が増えてしまうようだね。
 今度もその環から抜け出すには至らなかったようだ。」
「解せません、彼女だけではないのでしょう。私には彼等が解せない。」
「それでいい、その感情を大切になさい。」
「しかし…私もそんな彼等に興味が湧いてきました。」
「我々は彼等とは違う、しかし視ていてやる事も我々の役。興味を持つのならこれ以上の事はないだろう。」



自殺をするとその同じ人生をまたなぞるようにやり直す事になるらしい。
それとデジャヴの因果性は私が勝手に作ったものですが。
もし自分の人生が既に2回目以降のものだったとしたら、とか考えると凄いやるせなくなる。

しかし思ったまま書いてみたけどどうも気に入らんなこの文章。なんでだろ。
author : 瑞希 ×
まるでタバコの紫色い煙が絶えず肺から溢れ出してくるような

心臓、なのだろうか
左胸が絶えず痛い
それとも胃、なのだろうか
じんわり痛みを伴って穴が空いていっているような

鳥肌が立つ度に体中に走る鋭痛
常に何かに鷲掴みにされた左胸
熱を持たず凍った喉仏

背骨が鳴る音だとか
締め付けられる頭痛だとか

暗闇の雑踏と
輝きの静寂と

喉の奥の血の味はきっとこの先への予感









(大分前に書いてて、UPするのを忘れてた)
author : 瑞希 ×
日が終わる毎に積み重なっていく
胸に落ちる分銅が少しずつだが確実に
積まれたその重量はいつの間にか抱えて動くにはしんどい程のそれで

その錘を取り払う方法を知らないと言えば嘘になる
只それをしないのは私の中にそんな勇気なんて存在し得ないから

その錘を落としているのは他ならぬ自分自身
いくら自分以外を嘆いても意味を成さない事ぐらい知ってる
それらを嘆く為の理由は私の中にこそ在る

ただ、理解する事と感じる事はまた別の問題であって


雨のにおいは嫌いじゃない
泣いているのは私だけじゃないと安心できるから
author : 瑞希 ×
私が毎日文を書いているのは 生きている事を証明する為。
即ち、日記を書かない日は生きる事に疲れている日。
しんどい時以外は毎日書くようにしてる。
浮き沈みがはっきり判る日記。

私は1か0かの人間だから中途半端なこの生き方はとても苦痛で、
いっそのこと けりを付けてしまいたくなる。
ある意味武士道に通じてるんじゃないかなんて考えて自嘲気味になる今日この頃。
これは決してそんな格好良いものではない。
その事は一番よく判ってるつもりだ。
ただ現状に甘えているだけのくせして、いらぬプライドは捨てきれない。
どちらにも完全に振りきれぬまま、潔くない。
理想とは到底懸け離れたこの姿が酷くもどかしい。

もし死を美と評価したあの時代に生きていたら、私はその儚い美しさを選んでいただろうか。
多分私じゃ無理だと思う。

死について最近考える。
考えてる内に、自殺って本当に悪い事なのかふと疑いたくなる。
今は比較的正常な精神だから まだ「いけない事」っていう判断が出来るけど、
生きる事に疲れている時は、それさえ正当化してしまう。
けど私は怖いから。
死ぬのが怖いっていうのもあるけど、それをして周りの人から怒られるのが怖いから。
怒られるのは凄い怖い。
小さい頃から怒られ慣れてないから、凄い怖い。
ちょっとした失敗にも酷く落ち込む性格に造りあげられた私だから凄く怖い。
だから今生きている事の方を正当化して、無様に生きてる。
プライドは捨てきれないけど、こんな自分がとても情けないけど、
他にどうする事もできないから、毎日毎日なんとなく生きてる。
代わり映えしない毎日。
食べて寝る、それだけの毎日。
怖くて ろくに外にも出られない。
毎日ずっと家の中。
変わっていくのはTVの中の世界、窓から見える季節の移り変わり、周りにいる人々、
みんな少しずつ確実に何か変わっていっている。
私は2年前の7月から止まったままだ、これからも変われる気がしない。
夢は何一つ達成せずに終わるんだろう、そんな気がする。
自分から動き出さなきゃ変われないのも知ってる。
けど私は自分から動き出すその方法を知らない、私はいつも他の誰かに引っぱられて押されて流されて 今までの進路だって今の学校だって周りの意見。
みんなどうやって足を動かしてるんだろう、どうしてみんな自分から何かしようと立ち上がれる?
自分からは何も出来ない それを証拠に未だにバイトとか免許とか行けてないし。
みんなどうやって自分の道を歩いてるんだろう。

そんな多くは望まないから、せめて人として人並みに普通に生きたかったなぁ。
死を否定する生き方をしたい。
author : 瑞希 ×
1人で泣くより人前で泣く方が思い切り泣けるのは、悲しみの半分を持って貰っているからだろう
人は背負う荷物が多すぎると、その物の重さと背負う責任で泣くどころじゃなくなるんだ
だから何も持たない生まれたばかりの赤ん坊は激しく泣く事が出来て
人生を歩む内、人は荷物を少しずつ背負っていくから、涙も簡単には流せなくなる
そんな中、ふと急に背中が軽くなると、気持ちが緩んで涙の止め方も忘れてしまう
楽になる
軽くなる
けれど押し付けたその分、その人の荷物が大きくなる
それを忘れてはいけない
その人が歩く事に疲れた時には、今度は私がその荷物を半分持ってあげよう
それを成す為には、それまでにそれを成せる人間にならないといけない





少なくとも今の私には無理な事なわけで。
author : 瑞希 ×
暗く色のない路を渡る
近付くヘッドライトが照らし出すは彼の人
造り物の輝きが 彼の人を無遠慮に照らし 勝手に彼の人の陰を創る
渡りきる為に足を速めようとした・その時・ほんの一瞬、彼の人は考えた

『このまま立ち止まってしまおうか。近付くアレに身を委ねてしまおうか。』

彼の人は直ぐに恐怖した 自らの思考に恐怖した
だけれど同時に それを考えると僅かだが沸き起こる その甘い感覚を不可解に思い また恐怖した
震え上がるのは恐怖故か 誘惑故か それは彼の人にすら判らない事で

それでも彼の人は足を止める事をしなかった
背後を通り過ぎる轟音
恐怖が勝った 歩く事を選択した
音と共に光は過ぎ去った
暗闇だけがまた此処に残る
路に背を向けたまま立ちつくす彼の人は 自嘲を浮かべていた
そして自らが選択したこの暗闇に 静かに膝を折り 絶望した

彼の人の 人生の内の ほんの小さな 些細な出来事
author : 瑞希 ×
ねぇ、気付いていますか
その言葉の一つ一つが 僕を深く抉っている事
大好きだけど 憎くて堪らない 愛しき人
君の存在は僕の中で酷く大きくて 愛しくて堪らないのに 憎くてしょうがない

違う 君に非は無いんだよ
只僕が未熟で 嫉妬しているだけなんだ
あまりに君が遠いから 置いて行って欲しくないから
自分が此処から這い上がれないから
とても息苦しいのを 愚かにも君の所為にしているだけなんだ
僕が止まっている間にも 君はどんどん大きくなっていくね
気付いたら君は遠くて 蹲って目を閉じてる間に 君を見失ってしまったのは 誰でもない僕の責任
一瞬でも肩を並べていたと感じていたのは 只の自惚れだったのかなぁ

君の所為じゃない 僕が弱い所為
じゃなきゃ 世の中の『普通』の流れを こんなにも憎くは思わない筈だから


(別に誰とは言わないが・心当たりがあるようなら、多分それは君じゃない)













会いたいよ 愛しき人
author : 瑞希 ×
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